『光コンタクト? 懐中電灯でやるんだよ!』
UFO研究会 Yさん
ある日、西東京市民会館の前を通ると、見慣れない赤と黄色の小さな看板に「UFO展」と出ていた。そこには今日の日付しか書いてない。つまり今日限定なのだろう。しかし、観覧料499円とある。金を取る気だ。明らかなムダ使いになるのは目に見えている。だが明日には見れないと思うと立ち去りがたい。
とりあえず中に入ってみた。すると5メートル四方くらいの狭い部屋で確かに「UFO展」は行われていた。入り口におじさんがいるだけで、観覧者はいないようだ。ひとまずおじさんに話しかけてみる。
-ここは有料なんですよね?
「そうだよ。でも安いもんでしょ」
-なんで499円なんですか?
「なんか500円以上だと、このスペースのレンタル料が高くなるって言われたから」
-それでギリギリに設定したと
「そう」
私はこのおじさんと話しをしたいだけなのだが、お金を払わないと冷たい。仕方なく、お金を払い中に入ることにした。
中を見る。背景が黒のベニヤ板に、なぜか血しぶきのイラストが描かれおどろおどろしさを演出しているが、逆にそれが安っぽさを際だたせている。そしてその板に写真が約4枚と、それに関する説明や地図などがついている。肝心の写真は、安物のカメラで写したピンぼけの写真に「銀色の点」が写っている写真が続く。そんなものが10点くらいはあっただろうか。私にとってはどれもどうでも良かった。もとからUFOの存在など信じてはいない。私の興味はおじさんがどんな理屈でUFOの存在について語るかだ。
適当に展示物を見終えて、さて話そうかという時に、「1975年に新潟の飛行機がUFOを発見した時のテープを入手!」という看板があった。
「なんですか、これ? 聞かせてくださいよ」と言うと受付にあった赤いカセットデッキのスイッチを入れてくれた。
「最初の方は英語で途中から日本語になるから聞いてな」
と言うと正面を向いて黙り込むYさん。おとなしくテープに耳を傾けていると2分ほどで日本語が聞こえ始めたが上手く聞き取れない。「なんて言ってんですか?」と言ってもおじさんは無言だ。仕方なく再び聞き続けると、はっきりとした声で『なんだあれ!』と東北訛りの声で叫んでいるおじさんの声が聞こえた。しかもその後『UFOじゃねぇの?』と興奮したおじさんの声が続く。『UFOだよ!あれはUFOだ!』とおじさんが興奮して言い続ける。次に『あっ消えた!』、という声がテープから聞こえた。私がYさんを見ると「消えたり、出たりするんだ」と自慢気に言う。するとその通りに『あっまた出てきた』という声が聞こえた。
そしてテープは終了となった。とりあえず、あの興奮してUFOだと言っていたおじさんが、とてもきちんとした教育を受けたパイロットだとは思えなかった。どちらかと言うと、農作業中のおじさんのようだ。
-これはどこで入手したのですか?
「それを知ったら君が警察に捕まっちゃうよ」
とYさんは真顔でいいやがった。もちろん無視して質問を続ける
-あれは飛行機で録音されたテープなんですよね?
「まぁ、何年も経ったから時効みたいな感じで、もうこの人も現役を引退しているしね」
とあっさり、白状しやがった。
テープについてはさておき、話しを聞くことにした。
-ところで写真の発見者を見るとほとんどYさんですね
「そうだね8点くらいは私だね」
-そんなにUFOは見れるものなんですか?
「けっこう注意してると、見れるよ」
-ああ、そんなものなんですか。僕が注意してないからですかね
「そう、意外と見える」
-ところで、あっちの展示物に光コンタクトで交信ってありましたけど・・・
「ああ、懐中電灯」
-えっ! それをどうするんですか?
「チカチカってやるの。そうすると光が返ってくる。モールス信号みたいな感じ。でも向こうの言葉が分からないんだよね」
-そうですよね
「まぁでも、明日来るってことが分かったからカメラ持っていったらいた」
-いたんですか?
「いた」
-へー。あっここに写っているのがそうですか?
「そう、それ」(小さな銀の点が写っている)
-すごいですね。今までどれくらいUFOみました?
「40回くらいかな」
-ふーん。同じ研究会の方はみんなそれくらい見るんですか?
「もっと見てる人もいるよ。100回くらい見てる人もいる。だけど、その人は写真を撮らないんだよね」
-ところで、この板の画はすごいですね
「それが本職だから」
-じゃあ看板屋さんですか?
「そう」
-こうやって日本中で展示会やっているんですか?
「そうだね。関東の方で、会場を借りて、車に板を積んで普及活動に行くんだ」
-なるほど・・・
残念ながら、この後の予定の時間となり、これで会場を後にすることになった。もっと聞きたい気もするが、十分に楽しい珍解答が得られた。
なにより小学校時代から『ムー』を愛読していた私だが、UFOの存在を信じてる人と実際に話したのは実は初めてだった。そして分かったことは、彼がマジだと言うこと。
とてもこれを見た人が、UFO信じるとは思えない展示物の数々だが、あくまで彼はその存在を信じ、今日もどこかの街で、UFO展を開き普及活動をしているのだろう。
(了)
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