スポーツ新聞の困った体質

 前に仕事の関係で、FC東京の開幕直前の取材に行った。

 周りにいるのは、ニッカンやサンスポなど超大手スポーツ新聞社の記者ばかり。

 いつしか取材は、監督に対しての囲み取材となった。明日の試合に向けた何気ない雑談の中で一人の女性がこんなことを行った。

 「いや〜明日もアマラオがゴール決めたら、8試合負けなしですね」(試合数は忘れたので適当)

 すると周りにいた、記者が一斉に反応した。

 「えっ本当?」「ちょっと待ってこないだの試合が…」「何月の試合から?」

 と、逆にその女性を質問責めにし始め、しばらくみなその話題に釘付けになっていた。

 次の日のスポーツ新聞を見ると、案の定「アマラオゴールで次も負けない!」「記録なるかアマラオ!」となっていた。

 その時は「ふ〜ん」って感じだったけど、いま思えばあれはスポーツ新聞の体質なのだろう。

 なぜなら、その後も、「●試合連続完封」とか「●試合連続ゴール」とか「北島は国立では●試合連続で不敗」などの記事が異常に多いことに気づいたからだ。

 確かに「今日ゴールすれば、●試合連続かぁ」と思って試合を見ればそれなりに楽しめる部分はある。

 でも一方で、試合の中身や前日練習の中身があまりに置き去りにされていることも事実だ。

 先日のイングランド戦の後に日本に紹介された海外の新聞記事を見ると羨ましくなる。そこにはあの試合の選手評が地味な日本人選手にいたるまで細かく伝わられていた。

 特に「中村はジダン級だ!」とか「小野は素晴らしいプレイヤーだ」などの記事は嬉しい限りだった。そして、そこには、「俺達はヨーロッパのサッカーシーンを動かす存在だ」という自覚の元に無名の好プレーヤーに対しての素直な驚きがある。

 逆に日本の新聞で取り上げられるのは、得点を取った選手とアシストした選手、そしてその日のMVP的な選手だけ(イングランド戦では小野、サントス、中村)。久保と玉田、柳沢と鈴木という2パターンの2トップのどっちが優れているかがはっきりと分かった試合なのにそうしたことには一切触れない。

 肝心な批評は記事ではなく、解説者のコラムでのみ触れる。

 そうした日本のスポーツ紙の歪んだ部分が、かつて見た「●試合連続ゴール」に異様に固執する、あの場面に表れていたのだ。

 いまはサッカーサイトなどでも、選手や監督のコメントがきっちり載る。それを見て、新聞記事を読むと、記事の作り方が良く分かる。

 全くひねってない。プラスアルファもない。むしろ全コメントが読めるサッカーサイトの方が良いくらいだ。

 でもそんなスポーツ紙にあって面白い人がいる。

 それは東京中日スポーツの高橋さんだ。

 彼は「365日FC東京」という記事を担当し、それこそずっと練習場にいる。そして記事にする、しないに関わらず毎回4、5人の選手に話を聞き、最後に監督と話す。

 ヒゲこそ伸びていないが毛深そうな丸顔の30代半ばの人で、あまり服装に頓着しない感じ。決して清潔そうな雰囲気ではない。だが、逆にそれがいかにも記者らしい印象を受ける人だ。

 ある日、たまたま報道の待合い室で二人きりになった。私は思い切って「いつも見に来てますね」と彼に話しかけると、「会社の方針なんで…」と控えめな答えが返ってきた。自己紹介や名刺交換をすましてから、私が「あの連載好きですよ」と言うと「どこが?」とつっこまれた。

 「いや、試合の結果に一喜一憂するのではなく、素顔の選手のコメントが常に出ているところがいいですね」というと、「本当はサッカーにすっごい詳しいわけじゃないから、読む人が読んだらバレちゃうと思うんだ」と言っていた。

 それでも練習試合やサテライトの試合で誰が活躍したかまできっちり記事にして、さらに「今日のあいつは力強さがあった。そろそろスタメンを狙えるかも」などの原監督のコメントも同時に必ず加える。

 原監督も心を許しているのか、練習後に必ず10分以上は彼と話している。当然、スタッフや若手にもその存在は知られ、すっかりFC東京ファミリーの一員とも言える存在となっている。

 ああいう人は貴重だと思う。

 私は大手スポーツ新聞の薄っぺらい記事を見ると、いつもあの人を思い出す。


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