「女はティッシュ、使い捨てだね」
風俗店員インタビュー
ある飲み屋さんに行った時、私の友人であるマスターに「この人、風俗店の店員さん。いつも駅前でテッシュ配っている人」と紹介され、私は彼と話しをすることになった。彼は仮にNさんとしよう。やや童顔で若く見えるが恐らく35歳ぐらいだろう。スーツ姿で丸顔の彼は一緒に来ていた乱れた飲みっぷりの風俗店の店長の隣にいるせいか、とても信用できる人のように見えた。前歯が一本ないのが、少し気になったが。
―どうも、はじめまして
「はじめまして。Nです。ごめんね店長うるさくて」
―いや、平気ですよ。風俗店の店員って聞きましたけど、具体的に何やってんですか?
「うちはキャバクラ。大変だよー。スカウトした子をその日にしゃぶらせなきゃいけないんだから」
―えっ、まじですか
「そうだよ、うちはパブってことでスカウトして、個室に呼んで、そっからそこまで持っていくの」
―どうやってですか?
「それは、その女の子によって違うからなー。叱る時もあるし、ほめる時もあるし、時には目を濡らすことも必要だし」
―目を濡らす?
「その子の話を聞いて涙を流してあげることも必要だって意味。女の子は相手が自分を少しでも分かってくれたってだけで、心を開くもの。そうすればどうにでもなる」
―それはみんな上手くいくんですか?
「いや、始めにちゃんと店のことを説明して、その時点で『だったら、結構です』って帰る子もいるし。無理矢理っていうことはしない」
―割合でいうとどれくらい残りますか?
「4割ぐらいだね、ただまぁ、あそこをいじっちゃえばこっちのもんだからね」
―だから、なんでそこまで行けるんですか?
「それは経験だね。俺も22からこの世界にいるからね」
―どういう経緯でその世界に入ったんですか?
「最初は普通にサラリーマンやってたの。出身が長崎でうちは母子家庭だったから、大学行くよりも就職だろうと、工業系の高校入って、ニッサンに就職したんだけど、残業が月100時間。それを2年間。給料は12万ぐらい。残業代もある程度以上はカットされる。18歳がそんなの耐えられるはずがないじゃん。それで辞めて付き合った女の紹介で名古屋のお店に入った」
―それは何のお店ですか
「ホスト。それを2年間ぐらいやって、お金をもうけて、新宿に友達と共同出資でお店を出したの。それが91年だから、バブルの後」
―それはもうかったんですか?
「あの頃で毎晩、銀座に行って飲みまくってたからね」
―なんでもうかったんですか?
「女の子の質が良かったからだろうね。全部俺がスカウトした子」
―そもそもスカウトってダメモトでやるんですか?
「いや、それだとダメ。絶対に落とすと自分を信じ込ませないと」
―なるほど、それでそのお店はどうなったんですか?
「それがねぇ、共同出資の奴がお金持ち逃げしちゃって、女の子がその時、28人いたんだけど、俺が借金してその女の子に30万づつあげてさ。『悪かったね、次の店見つかるまでこれ使って』って」
―偉いですね
「いや、あの子たちは被害者だからさ」
―それで、その借金は?
「もろもろで結局2千万以上あったけど3年で返したよ。昼も夜も働いて」
―すごいですね
「だから、今では300万くらいでは、借金とは思わないね」
―その後は?
「色々あって銀座のキャバクラを任されることになったんだよね。その店はすごい潰れかけで店に行った時は、ガングロの子が2人いるだけ。とにかく色の白い子をスカウトして、20人ぐらい入れたかな」
―それでその店は?
「だめだった。なんでだろうね。たぶん銀座っていう街と合わなかったんだろうね。それで長崎に帰ってくすぶっていた所を高円寺の店に呼ばれていって、その後に、今の店に移ったってわけ」
―そんな生き方をしていると女性観って全く違うんじゃないんですか?
「女はティッシュ。使い捨てだね。お店でもそう教わってきたし。もちろん付き合う女の子は別だよ。でも店で扱う子はそう」
―そうなんですか・・・、今は彼女いるんですか?
「いるよ。こないだ遅くなって帰ったからケーキとビールをおみやげに両手に持って帰ったら、そのままズボン脱がされてチェックされた」
―浮気してないかですか?
「そう、両手におみやげ持ったまま。今の彼女には風俗店で働いているって言ってないから、喫茶店で働いているってことになってる」
―そうなんですか
「(沈黙の後で)明日も二人面接だ。こないださぁ、すごいかわいい子がいてさ。ここ2年ぐらいで一番かわいいんじゃないかな。その子が友達と来てて、ユニフォームも着てたんだけど、その友達の子がちょっと太めだったから、サイズがなくてそれで帰っちゃった。俺さぁ、押し倒そうかと思ったもん。その子の人生をめちゃめちゃにしてやりたかったね。これまでも『あなたのせいで人生が壊れた』って言って包丁持ってきて俺を殺そうとした子もいたし、東大生の子もいたな。その子は学校辞めちゃった。一度『これだけお金が入るんだ』と思うと、ずっとやっちゃうんだろうね」
―そういうものですかー
その後、店長が酔っぱらい手に負えなくなったため、Nさんがなだめに行き、「また会おうね」と私に言うと、そのまま二人で帰っていった。
こうして、飲み屋で出会い会話を交わしたNさん。話の途中で気になったのが、腕時計の見方だった。やけに神経質に見るその仕草から、まともそうな彼が精神的に少し病んでいることを感じさせた。やはりああいう職業を長くやると、どこかしら病んでしまうのだろうか。短い時間だったが普段接することの無い世界の一部を少し覗いた気がした。
(了)
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